新薬のメモ帳~過活動膀胱治療薬ベオーバ~


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薬剤師の波波です。

本記事は医療関係者向けとなっております。予めご了承下さい。

過活動膀胱(以下OAB)治療薬界においてβ3アドレナリン受容体作動という唯一無二の作用機序をもってして活躍しているベタニス(一般名ミラベグロン)に、遂に同じ作用機序のライバルが登場しました。
その名もベオーバ(一般名ビベグロン)。電話口で通じにくそうですね、べオーバって。個人的には語感もイマイチ・・・まぁそんなことは置いといて、恒例の審査報告書を見てべオーバがどんな薬なのか見ていきます。

何の薬?

OABにおける尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁の治療薬

用法用量は?

1日1回、50mgを食後服用。

どんな剤形?

淡緑色の円形錠剤で、即放性のフィルムコーティング錠。

安定性は?

原薬は光に不安定なためフィルムコーティング錠となっている。製剤としては光に安定。

一包化していい?

吸湿の記載はなく、光対策のフィルムコートもされているので問題ないでしょう。

粉砕していい?

光に不安定なため不可と思われます。服用直前に粉砕する分には問題ないかも知れません。

作用機序は?

β3アドレナリン受容体を選択的に刺激することにより膀胱平滑筋を弛緩させます。
用量依存的に膀胱容量を増大させ、膀胱内圧を低下させます。

安全性は?~ベタニスとの比較~

臨床試験で発現した有害事象は本薬 50 mg 群と本薬 100 mg 群で大きな違いはなく、既承認の OAB 治療薬群の結果を踏まえると臨床的に許容可能であり、その安全性は 52 週までの長期投与時にも大きく変わらないとし、機構も承認しています。

ベオーバ単独投与・抗コリン剤併用投与、両方において心拍数に対する作用が臨床上大きな問題となる可能性は低いとされています。
ただし、重篤な心疾患の合併症を有する患者は除外したため投与経験がなく、ベオーバの投与による症状悪化の可能性を否定しきれないことから慎重投与となっています。

警告の出ているベタニスとは異なり、ベオーバでは生殖発生毒性試験において問題は認められず、生殖可能年齢においても投与可能です。

尿閉はベタニスの添付文書では重大な副作用として注意喚起がなされており、ベオーバでも重篤な尿閉が発現する可能性を否定できないことから、添付文書で注意喚起を行うこととされました。

ベタニスでは海外長期投与試験において緑内障又は緑内障が疑われる有害事象が認められたこと等を踏まえ、添付文書に緑内障の患者への慎重投与及び定期的な眼科的診察の実施が記載されています。
対してベオーバでは、非臨床薬物動態試験にて眼における本薬の集積は認められるものの、発現した有害事象の種類も緑内障等の特筆すべき事象はなくいずれも軽度又は中等度であり、眼に対する影響は大きな問題となるものではないと判断されました。

食事の影響は?

空腹時に服用すると、食後服用に比べてCmaxは約1.7倍、AUCは約1.3倍に上昇しますが、食前投与と食後投与とで有効性及び安全性に明らかな差異は認められていません。
用法が「食後」と定められているのは、臨床試験実施に際して「食後の方が患者の利便性が良い」と判断されて試験が進められ、承認を受けた為です。

相互作用は?

・タンパク結合率は約50%⇨この点における相互作用の問題はないと思われます。

・P-糖タンパクの基質であることが示唆されている⇨後述します。

・CYP1A2・2B6・2C8・2C9・2C19・2D6・3A4に対する阻害作用はほとんど無い。また、CYP3A4に対する時間依存的阻害作用も示さない。

・CYP1A2・2B6・CYP3A4に対する誘導作用は無い。

・トランスポーターBCRP・OAT1・OAT2・OAT3にて輸送されないため競合は生じない。

・P-糖タンパク・BCRPの輸送を阻害しない。
⇨P-糖タンパクを介したジゴキシンの輸送に対して阻害作用を示さないことが確認されています。

・OCT1・OCT2・MATE1・MATE2-Kを介したメトホルミンの輸送を阻害する。
⇨臨床試験等においてメトホルミンとの相互作用については全く触れられておらず、考慮しなくてよいのかどうか正直よく分かりません。

ベタニス(ミラベグロン)との比較

ベタニスはCYP2D6阻害作用・P-糖タンパク阻害作用を有するといった相互作用面での問題があります。

対してベオーバは、CYP3A4・P-糖タンパクの基質である可能性が示唆されているものの、CYP2D6阻害作用はありません。
また、日本では承認されていない内服ケトコナゾールとの併用でもCmax・AUCは2倍程度の増加に収まるので、後述する忍容性の範囲内となりそうです。臨床上では併用にてベオーバ側の血中濃度上昇が問題となるケースは無いと考えて良さそうです。

残るリスクはP-糖タンパクの基質同士での競合ですが、これに関してはジゴキシン併用のデータがあります。

ジゴキシン単独投与時に対する本薬併用投与時のジゴキシンの Cmax及び AUC0-infの幾何平均値の比[90%CI]は、それぞれ 1.21[1.09, 1.35]及び1.11[1.03, 1.19]であった。

ジゴキシン濃度の上昇幅は小さいので、こちらも臨床上問題にはならないと思われます。

ジゴキシンと同じくP-糖タンパクの基質でありハイリスク薬のプラザキサ(ダビガトラン)については残念ながら併用データがありません。ジゴキシンのデータを見る限りは恐らく問題ないと思われますが、リスクを除去したければ併用を回避するほうが無難かも知れません。

代謝は?

UGT1A1・1A3・1A4・1A9により代謝されます。
CYP3A4による代謝も示唆されています。

排泄は?

単回経口投与480時間後までに投与放射能の20.3%が尿中に、59.2%が糞中に排泄される。
未変化体は尿中放射能の92.7%、糞中放射能の91.0%を占める。(外国人データ)

T1/2が約60時間と大変長く、一部腸肝循環もあるため排泄には時間がかかります。

BA:ラット20%、イヌ44%、アカゲザル23%、カニクイザル46%

BAの値が種別によってバラツキが大きいですが、良くてせいぜい40%台でしょうか。先の外国人データに当てはめれば、糞中への排泄はほぼBAの悪さに起因してそうです。
尿中排泄は未変化体がほとんど占めてますので、ベオーバは腎排泄型のようです。

腎機能障害者

本薬 100 mg を単回経口投与したときの Cmax 及び AUC0-inf は腎機能が正常な被験者と比較して、軽度腎機能障害被験者ではそれぞれ 1.96 及び 1.49 倍、中等度腎機能障害被験者ではそれぞれ 1.68 及び 2.06 倍、重度腎機能障害患者ではそれぞれ 1.42 及び 1.83 倍に増加することが示されたが、腎機能障害の重症度別の有害事象の発現状況に大きな差異は認められなかった。

腎機能障害患者に本薬 50 mg を反復経口投与したときの曝露量は腎機能障害の重症度によらず日本人において忍容性及び安全性が確認されている最大用量200 mg を反復経口投与したときの曝露量よりも低くなると推定されること、並びに本薬 100 mg を長期投与したときの安全性に特段の問題は認められていない。

腎障害者でCmax・AUCが増加していることから、先の「腎排泄型である」という考えは間違っていなさそうです。
肝心の腎障害者への投与ですが、忍容性・安全性が確保されているとして、重症度によらず注意喚起は不要と判断されました。

有効性は?

8 週時の 1 日平均排尿回数のベースラインからの変化量
プラセボ群:-1.16[-1.50,ー0.82]
ベオーバ50mg群:-1.80[-2.13,ー1.47]

8 週時の 1 日平均尿意切迫感回数のベースラインからの変化量
プラセボ群:-1.59[-2.07, -1.11]
ベオーバ50mg群:-2.36[-2 82, -1 89]

1 日平均切迫性尿失禁回数のベースラインからの変化量
プラセボ群:-1.11[-1.37, -0.85]
ベオーバ50mg群:-1.80[-2 06, -1 54]

うーん、まぁOAB治療薬ってこんなものですよね。2回くらい減れば御の字というか・・・。

臨床上の位置づけ

本薬と同じ β3アドレナリン受容体作動薬であるミラベグロンとの有効性及び安全性に関する位置関係については、検討可能なデータは提示されておらず、既承認薬を含めた OAB 治療薬の中から選択されるべき薬剤のうちの一つに位置付けられる

ベタニスとの直接比較試験は実施されていません。

まとめ

同一作用機序ということでベタニスとの比較になりますが、
・相互作用が少ない
・生殖可能年齢でも投与可
・緑内障リスクが無い
・腎機能障害者、肝機能障害者でも用量調整不要
という複数の使いやすさがあります。
既に服用している場合、積極的にベタニスからベオーバへ切り替える必要は無いと思いますが、新規にβ3作動薬を投与する場合はベオーバに軍配が上がりそうです。

参考資料

ベオーバ錠 50mg_杏林製薬株式会社_審査報告書
べオーバ錠50mg 添付文書

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