薬剤師の波波です。
先日9/30(日)、LINEの薬剤師オンラインコミュニティにてセミナーがございまして、恐れ多くも波波が講師を務めさせて頂きました。
お題目は「慢性便秘症治療薬に関する最近のトピックス」。
リンゼスの適応拡大、アミティーザ半量規格の承認、PEG(ポリエチレングリコール)製剤・ラクツロース製剤の登場、などなど動きが活発でしたので関心が高いかなーと思いまして。
まぁぶっちゃけて言うとネタ元はほとんどTwitterなんですけどね!Twitter様様です。
そのセミナーの中で「イギリスでの便秘薬使用状況に関するコホート研究」の論文をちょろっと紹介したのですが、自分自身サラーッと読み流してしまった感があるので、改めて読み返してみようというのが今回の趣旨です。
文献自体は2011年発表のもので古いのですが(既読の方がとても多そうです)、日本ではこれから登場してくるPEG製剤・ラクツロース製剤の使用状況について触れられていたので丁度よいかなと思い選びました。
論文の前に、記事タイトルにも入れている、日本で新たに登場する慢性便秘症治療薬についてサラッと説明しときます。各々詳しい説明は自分の勉強として新薬メモ帳シリーズで書く予定です。
目次
モビコール配合内用剤
有効成分:マクロゴール4000
PEG製剤で浸透圧性下剤として働きます。
2歳以上の小児から使用可能なのが特徴です。
ラグノスNFゼリー分包12g
有効成分:結晶ラクツロース
こちらもラグノスNF同様、浸透圧性下剤です。更に言うと、浸透圧性下剤の内、糖類下剤に属します。
ラクツロース製剤の一部は「小児の便秘」に適応を持っていましたが、ラクツロース製剤として慢性便秘症の適応承認を得たのが三和科学のラグノスNFです。既存のラグノスゼリー分包16.05gとは別物ですのでご注意下さい。
論文を読む
タイトル
Laxative Usage in patients with GP-diagnosed Constipation in the UK, within the general population and in pregnancy. An epidemiological study using the General Practice Research Database (GPRD)
イギリスでのGP(一般開業医)により便秘と診断された一般集団および妊娠中の患者における緩下剤使用。 一般実践研究データベース(GPRD)を用いた疫学研究。
PMID:22043228
方法
英国のプライマリケアデータベース(General Practice Research Database)を用いて、2005年から2009年までのコホート研究を実施した。このデータベースには、300万人を超える人々に関する情報が含まれている。
- コホート(研究対象集団)・・・18歳以上で便秘症状、慢性、急性および機能性便秘、および便潜血を含む便秘と診断された患者
結果
2005年と2009年とで比較されています。見やすいよう表にしました。
今回はラクツロースとマクロゴールに着目したいので少数派の薬剤は「その他」にまとめました。
一般集団における緩下剤使用の内訳と推移
ラクツロース | センナ | マクロゴール | その他 | |
2005年 | 37% | 26% | 19% | 18% |
2009年 | 29% | 22% | 31% | 18% |
妊婦集団における緩下剤使用の内訳と推移
ラクツロース | マクロゴール | その他 | |
2005年 | 81% | 13% | 6% |
2009年 | 64% | 32% | 4% |
考察
読み返してみたものの、本当にシンプルに便秘薬の使用状況を年間毎に抽出して比較しているだけなので特に考察することがありません。
・一般集団の種々の便秘に対して、ラクツロース、センナ、マクロゴールが主に用いられていたが、マクロゴールの使用が一般的になりつつある。
・妊婦の便秘に広く用いられていたのはラクツロースであったが、マクロゴールに置き換わりつつある。
ハイ、結果見たまんまです。
「こんな記事で良いのか・・・?」という疑念で溢れていますが他に見様が無いです。いや、イギリス以外も調べるとか話を拡げようと思えば拡げていけるんでしょうけど、今回の趣旨から外れていきそうなのでやめておきます。
しかしイギリス1カ国しか見ていないとは言え、日本の便秘治療と全く違いますね。アミティーザ登場で多少変わったでしょうけど「日本の便秘治療はガラパゴス」と言われても仕方ないです。
果たしてモビコール&ラグノスNFは日本のガラパゴス状態を解消できるのでしょうか。
カマグ・センナもうまく使えば医療費が安く済むので今後の動向が気になるところですね。
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