テルミサルタンとジゴキシン・ダビガトランの相互作用


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薬剤師の波波です。

本記事は医療関係者向けとなっております。予めご了承下さい。

降圧薬でARBに属するテルミサルタン(先発名ミカルディス・配合剤名ミカムロ/テラムロ、ミコンビ/テルチア)は、相互作用によりジゴキシンの血中濃度を上昇させる恐れがあるため併用注意となっています。
テルミサルタンは、どの程度・どのような機序で、ジゴキシンの血中濃度を上げるのでしょうか。

添付文書を見る

テルミサルタンの添付文書を見てみます。

併用に注意すること
ジゴキシン
臨床症状・措置方法
併用により血中ジゴキシン濃度が上昇したとの報告があるので、血中ジゴキシン濃度に注意すること。

ミカルディス添付文書より

添付文書だけではジゴキシン濃度がどの程度上昇したのか記載が無い為、併用について評価ができません。

IF(インタビューフォーム)を見る

続いてテルミサルタンのIFを見てみます。

■ジゴキシン(外国人データ)
明確な機序は不明であるが、ヒトにおける薬物相互作用の試験結果から、併用により血中ジ
ゴキシン濃度の上昇が認められたので、本成績に基づき記載した。
健康成人12名にジゴキシン0.25mg(負荷投与量:0.5mg)とテルミサルタン製剤120mgを1日1
回7日間反復併用投与し、7日間ジゴキシンを単独投与したときと比較した。
本剤との併用投与7日後の血中ジゴキシンのAUC、Cmax及びCminは、ジゴキシン単独投与時
に比べそれぞれ22%、50%及び13%上昇した57)。他剤との併用による血中ジゴキシン濃度
の上昇は、Ca拮抗剤、ACE阻害剤等の高血圧治療剤や抗不整脈剤でも報告されている。心
臓への副作用に関与するのはピーク時のジゴキシン濃度でなく定常状態の最低濃度(トラフ値)と考えられている。ジゴキシン単独投与時に対するテルミサルタン製剤とジゴキシン併用時の血中ジゴキシンのCminにおける90%信頼区間を用いて検討したところ、 Cminに対しては影響を及ぼさないと考えられた。

ミカルディスIFより

IFからテルミサルタンとジゴキシン併用時の具体的な数値が得られました。

テルミサルタンが120mgと臨床上では見かけない高用量ではあるものの、併用にてジゴキシンのCmaxを50%と大きく上昇させています。一方で、ジゴキシンのCminへの影響は無いと考えられることから心毒性発現リスクへの寄与は低い、と結論づけているようです。

しかし、ジギタリス中毒には消化器症状や視覚異常など心外性の症状もあるため、Cmax上昇へのテルミサルタンの寄与が気になります。

そもそも何故テルミサルタンはジゴキシンの血中濃度を上げているのでしょうか。IFでは「機序不明」とありますが、文献を探してみます。

機序に関する文献を探す

IFの元となった文献を当たってみます。
「telmisartan digoxin 22 50 13」でGoogle検索したところトップに出てきました。

The effect of telmisartan on the steady-state pharmacokinetics of digoxin in healthy male volunteers.
J Clin Pharmacol. 2000 Dec;40(12 Pt 1):1373-9.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11185636

テルミサルタンの併用によりジゴキシンの吸収が速まりCmaxが上昇した可能性がある。

During combination medication, digoxin tmax was shorter and Cmax/AUC144-168 increased, suggesting that the rise in digoxin Cmax may be due to more rapid drug absorption.

元の文献でも、何故?というところまでは解明されていませんでした。
もう少し調べてみます。

※この後、リンクを辿って次に紹介する論文に辿り着いたのですが、どうやって辿ったかが分からなくなってしまいました。この記事書く前はスルスルっと到着した記憶があるのですが・・・。

Rapid identification of P-glycoprotein substrates and inhibitors.
Drug Metab Dispos. 2006 Dec;34(12):1976-84. Epub 2006 Sep 22.

http://dmd.aspetjournals.org/content/34/12/1976

テルミサルタンがP-糖タンパクの基質である可能性が高いことが示唆されています。

Among the tested compounds, a greater than 2-fold increase in ATPase activity was observed for nafcillin, miconazole, misoprostol, and telmisartan, suggesting that these compounds are also likely P-gp substrates.

また、先の論文を引用した上で、P-糖タンパクに関してテルミサルタンとジゴキシンの間で競合が生じていると見られています。

This strongly indicates competition between telmisartan and digoxin with P-gp. 

確定ではありませんが、テルミサルタンによりジゴキシン血中濃度が上昇する仕組みがイメージできるようになりました。

では臨床上では、どのように対応するべきかを考えていきます。

考察 臨床上の対応

既にテルミサルタンとジゴキシンを併用している場合

テルミサルタンを増減する際にジゴキシンの血中濃度変化が生じる可能性があるため注意します。
・テルミサルタン増⇨ジゴキシン濃度上昇の可能性⇨ジギタリス中毒に注意
・テルミサルタン減⇨ジゴキシン濃度低下の可能性⇨心不全・不整脈の悪化に注意

ジゴキシン服用者にテルミサルタンを追加する場合

ジゴキシン濃度上昇の可能性⇨ジギタリス中毒に注意、となるのでテルミサルタン以外のARBへの変更を提案します。

テルミサルタン服用者にジゴキシンを追加する場合

・想定よりジゴキシンの血中濃度が高く出る可能性はありますが、ジゴキシン開始初期であれば血中濃度は必ず確認するので、特別な措置は不要かと思われます。
しかし、ジゴキシン血中濃度へ影響する可能性があるので、この時期にテルミサルタンの用量は変更すべきでないでしょう。・・・やはり面倒なので事前に他のARBへ変えておくべきかも知れません。

テルミサルタンとダビガトランの併用

P-糖タンパクが関与するハイリスク薬というと、DOAC(抗凝固薬)のダビガトラン(先発名プラザキサ)があります。
当記事記載時点(2018年10月)で、テルミサルタンとダビガトランの相互作用に関する記載・論文は見つかりませんでした。
従って私個人の推測になりますが、ダビガトランもジゴキシンと同じくP-糖タンパクに対する親和性は低い為、テルミサルタン併用にてジゴキシンと同じ挙動を示す可能性があります。DOACという性質上、石橋を叩いて渡るつもりで対応するほうが良いと考えます。

臨床上の対応

既にテルミサルタンとダビガトランを併用している場合

想定よりダビガトランの血中濃度が上昇しており出血リスクが増大している可能性が考えられます。
従って他のARBへの変更を提案した方が良いと思われます。

ダビガトラン服用者にテルミサルタンを追加する場合

ダビガトランの血中濃度が上昇する可能性がある為、テルミサルタン以外のARBへの変更を提案します。

テルミサルタン服用者にダビガトランを追加する場合

想定よりダビガトランの血中濃度が上昇し出血リスクが増大する可能性が考えられます。
従って他のARBへの変更を提案した方が良いと思われます。

まとめ

テルミサルタンとジゴキシンの併用注意は何故?から始まり、ダビガトランとの併用についての考察に発展しました。
しかし、あくまで考察の前提は「テルミサルタン120mgという臨床上見かけない高用量」です。色々と考えて述べてきましたが、実際には全く問題ないかも知れません。コレという明確な答えはありません。本記事を読んで、どのように評価・判断するかは読み手に委ねます。

ただ、やはり相手がハイリスク薬である以上、私は石橋を叩いて渡りたいと思います。

最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

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